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ギリシャの夏と言えば、誰もが真っ先に思い浮かべるのは、サンサンと輝く太陽、真っ青な海、白い砂浜、そしてバケーション。けれども、実際ギリシャに住んでいると、それにプラスされるのが‘山火事’。ギリシャに山火事・・・と聞いても、ピンとこない人は多いと思いますが、夏のギリシャには、とにかく火事が多いのです。江戸の名物が火事ならば、ギリシャの夏の名物も‘火事’だと言っても過言ではない程。何しろ、多い時には、一週間の内に1,000以上もの火事が起きるのですから。時によっては、一日に、ギリシャ全土で150箇所以上が一度に燃えている、なんて事もあるのです。だから、私も、こちらに住み始めてから数年もすると、その夏一番の火事のニュースをテレビで見る度、‘あ〜、今年もまた夏が来たか〜。’なんて感じるようになってしまいました。
けれども、‘山火事’とは言え、ニュースの中の事だけと、のほほんとしているわけにはいきません。と言うのも、ギリシャでは、ある程度‘木’のはえている所なら、どこにでも火事が発生する可能性があるからです。現に、今年の夏一番の火事は、我が家の真ん前の森の火事でした。
太陽の日差しが強まってきた、6月のある朝、私達家族はサイレンの音で目を覚ましました。あんまりにサイレンの音が近いので、ベランダに出てみると、何と、目の前の森がメラメラと燃えている・・・。私達は、5階建ての建物の最上階に住んでいるので、森の端から端までが見渡せるのですが、正面から向かって右側の一帯が火に包まれているのです!この森は、我が家のある通りから、ずーっと先にある国道まで続いているのですが、何と、その国道沿いにある小学校に向かって火がつき進んでいくのまで見えます。もちろん、近所の人達も皆んな外に出て、燃え盛る火を眺めたり、中には自分達の庭からホースを引き、森に向かって消化活動をしたりと大忙し。人だかりの中には、この市の市長(我が家は厳密に言うと、アテネ郊外の市にあたる所にあります。日本で言うと、東京都武蔵野市といった感じでしょうか。)の姿も見え、禿げ上がった頭をふきふき、周りの人達と話しをしています。それが、突然ケンカ腰になり、近くにいた親父さんとあやうく殴り合いになるところを周りに止められたりと、観察していると、火事よりも面白い。(−と言ったら不謹慎ですが。)どうやら、この火事が起こった為、何人かの人が、市長に向けての不満をぶちまけたようです。‘お前がこの森の管理をきちんとさせていないから、こんな事になるんだ!’などの怒声が聞こえてくると思えば、それに便乗して、‘この辺りには、子供の遊び場さえなくって、あそこの角にあるあんな小さな公園だけ。市長さん、どうにかして下さいよ!’とか言うおばさんのキイキイ声まで聞こえてくる始末。市長にしてみれば、心配で来てみたのはいいけれど、火事とは全く関係のない事まで責められて、いい迷惑と言った感じ。現に、この森は市に属していないので、市長は、管理うんぬんには全く関与できないのですが・・・。それにしても、市長と住民の殴りあい・・・なんて言うのは、滅多に見られるものでもないので、ちょっと期待してしまいました。後ちょっと、というところでおさまってしまったのが、チョッピリ残念。(私は悪い奴でしょうか??)
結局、この火事はそれ程大きくならずに食い止められたし、小学校の生徒達も、無事に非難した為、大事には至りませんでした。けれども、今まで木が生えてうっそうとしていた部分が丸焦げになってしまったのを見るのは、胸が痛みます。実は、この森は2年前にも燃えているし、その何年か前にも燃えている・・・。その為に、部分的に木のサイズが全く違うし、2年前に焼けた部分は、まだ白茶けた色をしたまま。せっかくの緑が失われていき、悲しい限りです。後から人に聞いた話によると、火元は何箇所かあったようで、それらの場所から一斉に火がつき、燃え広がったとの事。つまり、放火の疑いが強い、と言う事です。
ギリシャの放火の場合、計画的犯行が多く、大抵は、発火装置のようなものを夜のうちに設置しておいて、それを翌日、ある一定の時間になるとリモコンで操作し、火をつける・・・という方法が行なわれているよう。ギリシャの山火事のうち、幾つかは、猛暑の為、森の中に放置されたガラスなどに太陽の光が反射し、そこから火が出た、というのが原因だったりするようですが、実際は、放火が多いようです。私も、詳しい事はわからないのですが、なんでも、ギリシャには、‘木の生えている所には、住居を建ててはいけない。’とかいう法律があるらしく、その為に、森や林などを燃やしてしまって、何年が経ってからそこに家を建てて、売ろう・・・という人達が、人を雇って放火をしているらしい。これについては、どのギリシャ人も知っているけれど、あえて触れない、といった態度をとっています。どうやら、この放火犯は組織化されていて、多分政治家なんかもからんでいるのではないかとの事。つまり、ニュースなどで、時々、放火犯人の逮捕を目にしますが、これらの犯人のバックには大物が控えていて、そういう黒幕は決して捕まらない、と皆んな知っている為、特に追求もしない・・・と言った感じなのです。
それにしても、今年は特に火事の被害が多いようで、森や林だけでなく、数多くの民家までが燃えています。トルコに近い、サモス島と言う美しい島は、一週間以上も燃え続け、滞在していた多くのツーリストも非難しなければならなかった程。そこに滞在していたオランダ人ツーリストへのインタビューを見たのですが、‘この火事についてどう思いますか?’という質問に対して、彼女の返事はこうでした。‘この火事で一番被害を受けるのは、私達ツーリストではなく、この島の住民なんじゃないですか?。’テレビでは、何かにつれ、ツーリストがどうのこうの・・・というニュースを流していましたが、私もこのオランダ人の女性と全く同じ考え。ツーリストにとっては、‘あ〜あ、せっかくのバケーションがダメになっちゃった。’位で済む問題ですが、実際、この島で生活している住民の事を考えると悲惨です。ある老人は、マイクを向けられた時、悲痛な顔をして、こう言っていました。‘わしの年金は、月に6万ドラクマ(日本円で約2万円)しかない。長年かけて育ててきたオリーブの木も、家も焼けちまって、これからどうやって暮らしていけっていうんだ!’今頃、この老人は、どうやって暮らしているのかしら?そう考えると、胸が詰まる思いです。
ギリシャの美しいビーチも、それを彩る緑があって一層映えるもの。それが、無残にも焼け焦がされているのを見るのは、何とも悲しいし、怒りがこみ上げてくる事です。放火をしている人達は、こうやって、美しい自然が破壊されていくのを見たり、貧しい老人が、家や畑を失って嘆いているのを聞いても、何とも感じないのでしょうか?そこまでして、お金を儲けたいと考える人達が存在するというのは、恐ろしいな〜とつくづく感じてしまいます。こういう人達は、ギリシャだけでなく、日本や他の国にも沢山いるのでしょうが・・・。
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